自然が育んだ木材は、天然の優美さと、以外にも鉄やコンクリートに勝る強靭さを持ち合わせております。
製作工程で御覧頂きましたテーブルは、芯材に集成材を使用し、表面に化粧材の天然突板(てんねんつきいた)を練付(ねりつけ)しています。では何故、全て無垢材を使用しないのでしょうか?それには、価格以外にもこの様な理由が挙げられます。
木材の性質
重量
材種により様々ですが、御覧頂いたテーブルが無垢材なら、天板のみで50kgにはなるでしょう。
天板の芯に集成材を使う事で、テーブルとしての強度を保ちながら、重量を6割程度に抑えています。
もし、建具を無垢材で製作しますと、建具の重量を支える、相当の枠や吊金物が必要でしょう。
誤って、無垢材の建具に指を挟んだ場合、かなりの損傷も考えられます。
木製建具の構造では、襖や障子の桟のような芯を組み、5.5mmのベニヤを貼り、その上に0.6mmの化粧突板を貼ることで、これらの欠点を補っています。
木材の変形
木材は生き物です。伐採直後は乾燥材重量の50~200%の水分を含んでおり、乾燥が不十分だと、強度低下、反りや割れを生じます。
適度な乾燥後でも、大気中の湿度に敏感に反応致します。
東京を例にあげますと、8月の木材中の含水率は約14%、1月が約10%、平均して約12%ですので、木材の含水率を12±2%に調整することが必要です。
この様に、四季のある日本では、調湿作用のある木材は最も建材として適していると言えるのですが、この調湿作用により、常に伸縮を繰り返し、節のある所ではねじれも生じます。
この様な変形を防ぐ為に、補強材を通したり、集成加工することで補っています。
また、加工製品では、表裏に同素材、同塗装を施す事により、表裏の伸縮率を同じに保つ事も、必要不可欠な方策です。
強度
単位重量当りの強度を比較すると、杉と鉄では約4倍、コンクリートでは5倍の強度が有ります。そのため、強度に合わせれば、製品重量は大幅に軽量化が可能となり、コストダウンにも結び付きます。
断熱性、調湿性
夏は涼しく、冬は暖かく、湿度が高い梅雨には水分を吸収してくれる。そんな夢のような性質が木材には備わっています。
断熱性の熱伝導率は鉄の200分の1、コンクリートの4分の1の低さで、調湿能力は3mの10cm角の柱1本で、一升瓶1本分の水分を出し入れ出来ると言われております。
防音効果
木材は人間の可聴範囲の中で、不快感を伴う高音部と低音部を吸収する働きがあり、心地よい音響空間を作ります。
ホールの舞台は勿論、壁面に木材が使われるのはこのためです。
防火性能
木材は燃えますが、断面が大きくなると表面は焦げて炭化層ができ、酸素の供給が絶たれ、断熱性能も高いので、内部に熱を伝えず燃え難くなり、1000℃以上になっても必要強度は保たれます。
火災現場の後に、黒く焼け焦げた柱や梁が、燃え尽きる事無く残っているのはこのためです。
集成材
天然木には、大節や割れなどの欠点がありますが、これらの欠点を除いたうえ、積層する事で品質を均一化し、強度性能を高めています。
集成材は木工製品の芯材や化粧材として多く使用されており、芯材としては、加工し易く軽量なものが用いられておりますが、同素材の無垢材に比べ、強度は1.5倍、反りやねじれもほとんど無く、長さや大きさに制限無く製作が可能です。
集成材の含水率も12±2%に設定し、木材の表裏を交互に組み合わせるなどの工夫で、可能な限り寸法変化を少なくしておりますが、最近の高気密住宅での冷暖房により、状態によっては含水率が5%にまで変化する事もあり、この様な状況では、集成材と言えども割れや狂いを生ずる事もあります。